システムデザイン研究科

機械システム工学域

藤江 裕道

最終更新日:2019/02/28

生体膝関節と幹細胞培養における力学機能解析

バイオメカニクス、幹細胞、組織再生工学、関節のバイオメカニクス、トライボロジー

  • 藤江 裕道

  • Hiromichi Fujie

研究概要 幹細胞培養に物理的荷重の効果を発見
「関節力学試験ロボットシステム」を独自開発

 30年余り前、大学で入ったトライボロジー(材料の摩擦、摩耗、潤滑)に関する研究室でバイオメカニクス研究に出会った。バイオメカニクスは生体と力学を合わせた新分野で生体工学とも呼ぶ。たとえば人工心臓や人工関節がこの分野に入るが、近年はモノだけではなく、細胞を移植して組織を治す研究も含まれている。
 現在、学外の医大や獣医師と連携し、主に以下の研究をしている。1つ目は、人の関節の力学的機能解析だ。専用の「関節力学試験ロボットシステム」(写真)を用い、関節の複雑な運動や負荷状態を疑似再現している。もともとは海外留学時代に独自開発したシステムで、現在は国内外の研究室で標準的に使用されている。
 具体的には人の膝関節において前十字靭帯の張力の基礎的で定量的な特性データを集め、解析している。前十字靭帯を再建するためのさまざまな手術方法を使った膝関節を使用することで、定量的データを元に手術方法を評価する研究もしている。伸展、屈曲角度によって、どの腱組織をどの場所にどう再建すれば妥当かを精緻に検討でき、手術法の進歩に寄与している。
 2つ目は、幹細胞を用いた再生医療工学に関する研究だ。膝を動かすための関節液を分泌する滑膜から幹細胞を採取し、滑膜由来の幹細胞自己再生組織(scSAT)を培養する際に、ある種の物理的荷重をかけることで、引っ張り強度の高い再生組織が形成できることを確認。またナノサイズのマイクロパターンを持つ培養皿を使用すると特定方向からの力に強い(異方性ある)未知の組織が培養できることを発見した。
 3つ目は、膝関節にある正常な軟骨が持つ驚異的な潤滑性能のメカニズム解明と前記scSAT組織培養への応用を研究している。臨床現場では膝関節治療に軟骨表面へ豚由来のシート状のscSAT組織を移植しているが、潤滑性や強度面でさまざまな課題がある上、やはり人の組織の使用が望ましい。人における軟骨修復治療や手術での応用とその効果に関する研究を進めている。

最近のトピックス

今後の展望 新たな再生医療材料や治療・手術法の開発へ

 バイオメカニクス分野では世界のトップクラスにある。膝の腱や靭帯、軟骨などの修復や移植において、強度、異方性、潤滑性などさまざまな特性を持つscSAT組織の培養法や機能分析を通じて、新たな再生医療材料や治療法、手術法を開発できる可能性がある。たとえば、機能の違う複数のscSAT組織をシート状にしたものを移植する新たな手術手法も考えられる。今後は外部の医大とさらに連携を強化し、基礎研究だけでなく臨床活用面の研究を強化していきたい。

関節力学試験ロボットシステムでの試験<br />
人や動物の骨を使った膝関節前十字靭帯の関節力学試験。現在、さらに小型化した最新システムを開発中だ。 関節力学試験ロボットシステムでの試験
人や動物の骨を使った膝関節前十字靭帯の関節力学試験。現在、さらに小型化した最新システムを開発中だ。
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例 バイオメカニクスに関する基礎データの収集、新しい再生医療材料の開発、治療法や手術法の開発。また関節力学試験ロボットシステムは当研究室で設計し、製作は( 有) テクノロジーサービスで行っている。

印刷用はこちら