人間健康科学研究科

ヘルスプロモーションサイエンス学域

藤井 宣晴

最終更新日:2019/02/28

収縮による骨格筋の糖輸送促進調節

骨格筋、収縮、運動、糖尿病、インスリン、細胞内情報伝達、分子生物学、細胞生物学、遺伝子工学

  • 藤井 宣晴

  • Nobuharu Fujii

  • 眞鍋 康子

  • Yasuko Manabe

研究概要

現在、日本の統計では成人の17%が糖尿病、または糖尿病が強く疑われる状態にあるといわれる。
「私はハーバード大学医学部で、運動と糖代謝の専門家として複数の製薬会社との糖尿病治療薬の共同開発に携わってきました。そこでは、新薬の効果の比較基準に“運動”が用いられていました」。
糖尿病の治療現場では、運動ほど治療に効果があり、しかも副作用のない薬は存在しないといわれている。
骨格筋への糖の取り込みを促進させ、血糖値を降下させるホルモンは、生体内ではインスリンだけである。そのため、人類は糖尿に脆弱で、何らかの原因で骨格筋のインスリン感受性が低下すると、糖尿病になってしまうと考えられてきた。
「運動にも強力な血糖降下作用があり、しかもそのメカニズムはインスリンのそれと全く異なることを明らかになってきました。つまり、インスリンの効きが悪くなった糖尿病患者に対しても、運動をすることでインスリンとは異なった経路を通じて血糖値を下げることが可能だとわかったのです」。
また、こうした運動の医学的効果を生みだす細胞内分子として、AMPキナーゼを同定。さらに、これまで作用機序がわからないまま使用されていた糖尿病治療薬メトフォルミンが、AMPキナーゼを活性化させることを突き止めた。つまりメトフォルミンは、運動とほぼ同じ作用機序で糖尿病を改善させると同時に、予防にも充分効果があると判明したのである。運動生化学研究室では、AMPキナーゼ以外にも糖の取り込みを促進する細胞内分子がある傍証を得ており、その正体解明に取り組んでいる。

最近のトピックス

今後の展望

運動の医学的効果は、糖尿病の予防・改善に限定されない。近年の大規模な疫学調査では、身体運動が驚くほど多様な医学的効果を全身の臓器にもたらすことが証明されている。この「多様性」と「全身性」は投薬の効果をはるかに凌駕しており、重要性は強く認識されているものの、本態は全く不明である。
そこで運動生化学研究室では、「筋肉を動かすと筋肉自体から何らかのホルモンが分泌され、運動の多様な効果が全身に届けられている」という仮説の検証を実施。これまではホルモン分泌器官と考えられていなかった筋肉の、新たな役割の顕在化を試みており、すでに数種類の分泌ホルモンを発見することに成功した。また、併せて「運動調節性のセクレトーム(分泌ホルモンの網羅的理解)」という新学術領域を首都大学東京に開設し、創薬、新医療方策、新運動療法に寄与する研究の発展を目指している。

メトフォルミン投与と生活改善(運動)による、糖尿病発症の低下率の比較 メトフォルミン投与と生活改善(運動)による、糖尿病発症の低下率の比較
インスリンを投与した場合(左)と、運動をした場合(右)の血糖値降下の機序 インスリンを投与した場合(左)と、運動をした場合(右)の血糖値降下の機序
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例 バイオテクノロジー、医療、医薬品、健康食品、サプリメント、健康分野一般

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