人間健康科学研究科

理学療法科学域

竹井 仁

最終更新日:2019/02/28

徒手療法を用いた体性機能異常の治療効果

関節運動学、筋運動学、機能解剖学、徒手療法

  • 竹井 仁

  • Hitoshi Takei

研究概要 人の体の動きのメカニズムを解明し可視化する
科学的な根拠データを最新技術で収集、体系化

 人には加齢、怪我、障害などによって体に痛みを感じ動きが悪くなり、日常活動に支障が生じることがある。体の運動機能の改善を図り、正常な機能や姿勢を取り戻し、維持させるのが「理学療法」である。理学療法には、実際に手を使い痛みの改善や動きの回復を図る「徒手療法」、温熱、超音波、アイシングなど物理的刺激を使い治療する「物理療法」、筋力増強運動やストレッチ、日常動作改善法などを教示する「運動療法」などがあり、現在は徒手療法に関する研究を進めている。
 基本的には、人の体の動きのメカニズムを解明し可視化するための研究をベースに活動をしている。なぜなら、人の体の動きの裏側で関節、筋肉、筋膜などがいかに動き、連動、作用しているかについて、客観的なデータを収集し統合的に整理していくことが非常に重要であるからだ。エビデンスがなければ、正しい治療は難しいし、患者の信用は得られない。これらの考え方は、欧米では30年も前に提示され、科学的な研究法とデータ、治療法が形成されてきたが、日本は出遅れたままになっている。日本の理学療法および徒手療法を高度化し発展させる上で不可欠な視点なのである。
 具体的には、MRI(磁気共鳴画像)による人の関節の動きの解明を進めている。肩鎖関節や胸鎖関節、骨盤の仙腸関節などさまざまな部位のさまざまな動きを、角度を変えて撮影した上で、それらの関係性を研究している。3年ほど前からは超音波とエラストグラフィー(超音波画像化技術)、圧痛計、筋硬度計などを使い、筋肉と筋膜の弾性状況(硬さや柔らかさ)や内部の血流の変化、筋膜がどう滑るのかなどを研究している。当然、これらデータを元に患者の主観を交えてさまざまな治療法の効果や多部位の機能への影響も検証、研究している。
 科学的なアプローチを導入すると、患者に対する治療法は大きく変わるはずである。局所的で対処療法的な治療法を誰に対してでも同じように繰り返すのではなく、患者の既往歴、生活習慣、患部と他の箇所との連動や影響を加味したパーソナルな治療法が可能になるはずである。

最近のトピックス

今後の展望 長い間常識化されてきた治療法を最新の科学で再検証していきたい

 最新の技術で科学的な根拠のあるデータを作り、体系化へ向けた研究を進め、次代を担う若い人材の養成するのと同時に、臨床の現場や講習会などを通じて専門家への提言や啓蒙を進めていきたい。そのためにも、日本の理学療法士の世界において長い間常識化されてきた治療法を最新の科学で再検証していきたい。たとえば、針灸師の使うツボは長い歴史があるがエビデンスが乏しい。しかし、筋膜を科学的に研究することで、筋膜が高密度化して基質がゲル化した局部(協調中心)が明確になってきた。すなわち筋膜の解剖学的配列から、ツボ・経穴・トリガーポイントといった痛みの部位が科学的に解明されてきたのである。他にも、科学的な根拠がないにもかかわらず、使用され続けている治療法が多く存在している。海外はその解明が進んでおり、日本の経験に頼った治療法との差ができ始めているのは残念なことである。

超音波エラストグラフィーによる筋肉と筋膜の分析画像<br />赤くなるほどが柔らかく、青くなるほど硬いことを示している(左)。白い部分は筋肉表層および筋肉中の筋膜の位置を示している(右) 超音波エラストグラフィーによる筋肉と筋膜の分析画像
赤くなるほどが柔らかく、青くなるほど硬いことを示している(左)。白い部分は筋肉表層および筋肉中の筋膜の位置を示している(右)
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例 科学的根拠を持った徒手療法や用具等の開発。学外での定期的な講習会や研修会を通じ、啓蒙、教育活動を実施している。

印刷用はこちら