都市環境科学研究科
環境応用化学域
立花 宏
最終更新日:2019/02/28

水から電子や酸素を取り出す人工光合成型物質変換反応

光、ポルフィリン、アルカン、アルケン、エポキシ化、水酸化、水、人工光合成
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立花 宏
Hiroshi Tachibana
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高木 慎介
Shinsuke TAKAGI
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嶋田 哲也
Tetsuya Shimada

「私たちの研究室では、可視光を利用した人工光合成型の物質変換反応全般について研究しています。人工的に光合成を行うことができれば、水と二酸化炭素から有用な化合物やエネルギーを生成できるわけで、これは、古くから望まれていて、まだ実現していない人類の夢のひとつです」
人工光合成を行う上での最大の問題は『いかにして水から電子を取ることができるか』。それができなければ、人工光合成は成り立たない。「紫外線を当てて水を分解する反応は既にあるのですが、可視光を当てて水から電子を取り出すのが理想的なやり方です。それが自然の中で行われている、植物による通常の物質変換のサイクルです。私たちの研究室では、この可視光を使って水から電子を取り出す手法、すなわち、人工光合成型の水分解反応を発見しました。人工光合成の実現に大きな一歩となる発見です」

「人工光合成型の水分解反応の研究過程で、『不斉』を作れることが(不斉を誘起できること)がわかってきました。不斉化合物を自由に作れるようになれば、特に薬品などは、人体にとって非常に有用なものができるのです。さらに研究を進めていく予定です」
また、人工光合成の研究は、戦略的創造研究プロジェクト『CREST』に採択されていたが、さらに引き続き、より発展・展開が望まれる研究テーマを支援するプロジェクト『SORST』に採択された。次世代のための重要な基礎研究と位置づけられており、国家プロジェクトのひとつとして研究が継続される予定である。

「人工光合成の研究では、現在『人工光合成パネル』を製作中です。これは、触媒を並べて、太陽光を当てて有用な化合物を作りながら、一方で、電流や水素を取り出したり、二酸化炭素の還元反応を起こさせたりするものです。ただ、人工光合成そのものの実現はまだ先のことでしょう」
短い時間スパンでの今後の研究テーマは、光エネルギーを効率よく捕集して有効に反応中心に移動させる方法や、そのために色素分子を自在に並べる方法を開発することなどが挙げられる。光を使って情報を変換することにも応用展開できる。その基礎になるのが、分子を一定に並べたり、方向付けたりする技術(分子配列・配向制御技術)である。当研究室では、既に、分子を思い通りに並べて一定の構造・機能を持たせる技術の足がかりを得ている。こうした技術が実現されれば、分子の膜などを作り、センサーなどの機能材料としても利用できる。
「それと関連して、光を当てると形を変える色素分子に注目しています。ナノシートにサンドイッチして光を当てると色素分子が形状変化するので、ナノシート部分も含めて全体の形も膨らんだり、縮んだりすることを発見しました。光を当てて色や形状が変われば、様々な分野に応用可能です。こうした研究も行っていく予定です」
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例 |
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