理学研究科

数理科学専攻

福永 力

最終更新日:2019/02/27

並列計算処理技法の理論、応用、システムの構築

並列計算、CPU アーキテクチャ、計算システム

  • 福永 力

  • Chikara Fukunaga

研究概要 電動車椅子の危険探知・回避システム
画像を分割、並列処理中小企業へ技術提供の意向

 専門分野は素粒子物理学。2013年までヒッグス粒子を探索するアトラス実験グループのメンバーとして、スイス・ジュネーブにあるCERN研究所で膨大な素粒子衝突実験データを解析用コンピュータの媒体へ記憶させる際のデータマイニングや技術設計をしてきた。現在も仕事の3割を占めており、年数回、ジュネーブに飛んでいる。また、現在まで25年近く一貫して研究しているのが「並列処理」である。
 並列処理とは、複数のプロセッサーでネットワークを作り、一つのタスクを協力して処理する手法だ。アルゴリズムを考えるのが非常に難しいのが課題で、高性能プロセッサーが次々登場したこともあって一時期下火になった。現在はビッグデータの時代になり、大容量のデータ処理が一般的になってきたため、1チップに多数のコアを載せたマルチコアシステムなどが登場、並列処理は再び注目されている。
 並列処理の研究では、並列処理用のプロセッサーやチップの作成から行っているが、4年ほど前、動画処理での活用を検討。その1つとして自動車運転での危険物探知システムに着目した。だが自動車会社で使う動画は秒60 コマ。我々の研究室のチップでは秒5コマの処理が限界であったため、もっと低速に動くモノでの活用を考えていたところ、東京都立産業技術研究センターの方から、車椅子事故が多発していると聞き、東京都の安心・安全な街づくりを目指すものとして「電動車椅子における危険探知・回避システム」の開発を決意した。
 こうして、約3年間かけて開発したのが、車載カメラを目として危険を察知し、車を自動的に制御するシステムだ。情報処理の部分において並列処理を採用し、大きく4つの工程(パイプライン)を組み込んでいる。①動画フレームをまずコマに分けて静止画を作る、②その静止画をいくつかに分割、③分割された静止画を複数のプロセッサーで並列処理しマスタープロセッサーへ報告させる、④データを再統合して危険物の有無を判断し次の指令を出す。
 ポイントは、静止画にして分割することで、不要データをはぎとり、簡易化でき、小さなプロセッサーでもロスなく素早く次々に処理できる点である。加えて電力やハードウエアの省力化にもつながり、車椅子にも搭載しやすい。
 これから製品化段階に進むが、そこは東京都の中小企業に引き継いでもらいたいと考えている。

最近のトピックス

今後の展望 時間的な概念を入れた形式手法の提唱

 並列処理には悪い面もある。個々のプロセッサーそれぞれに異なるソフトウェアが組み込まれているため、そのどこかにバグが残っているとデッドロックすることがある。イベントが起きて、次のイベントが正しい順番で起きていればデッドロックは発生しない。しかし、前のイベントに余計な時間がかかると、次のイベントでプロセッサー間が一生同期しない可能性も出てくる。デッドロック対策として、並列システムを設計するときの「形式手法」(フォーマルメソッド)がある。現在、研究しているのは、イベント処理に新たな座標軸として時間的な概念を入れた形式手法だ。従来から必要とされてきたことだが、それを私は私の方法で提唱したいと考えている。

危険探知・回避システムを搭載した電動車椅子<br />2つのカメラから入力された映像を並列処理で分析して車椅子の動きを制御する 危険探知・回避システムを搭載した電動車椅子
2つのカメラから入力された映像を並列処理で分析して車椅子の動きを制御する
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例 並列処理を用いた動画像処理・解析、車両等の危険認知・回避システム。

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