理学研究科

物理学専攻

真庭 豊

最終更新日:2019/02/28

カーボンナノチューブなどナノ構造物質系の研究

ナノ構造物性、ナノサイエンス、次世代インクジェット、分子ふるい、ナノバルブ、ガスセンサー

  • 真庭 豊

  • Yutaka Maniwa

研究概要 極微の世界での水の不思議な振る舞いを解明

 「私たちの研究室では、カーボンナノチューブに代表されるような、ナノ構造物質系に特徴的な現象を物理学の手法を用いて研究しています」
 1nm(ナノメートル、10億分の1メートル。小さな原子数個分くらいの長さ)程度の極小空洞に物質を入れると、普通の環境では観察されない様々な興味深い性質・現象が現れる。
 「例えば、氷になるのは通常は0℃ですが、1nmの空洞(ナノ空間)の中では、-80℃以下で凍結し始めたり、逆に室温の状態で氷の状態として存在したりするのです。『水』というのは、私たちに身近な物質ですが、その水がナノ空間の中でどのような振る舞いをするかは、これまでほとんどわかっていませんでした」
 ナノ空間内では、上記のように日常空間では考えられない様々な現象が起こるため、ナノ構造を研究することで、新しい機能物質や新素材が生まれる可能性が高い。

最近のトピックス 『室温の氷―室温アイスナノチューブ』を世界で初めて作った

 2004年には、単層のカーボンナノチューブ内に吸着した水蒸気が、低温で筒状の氷(アイスナノチューブ)の形で存在し、その融点がカーボンナノチューブの直径によって変化すること(直径が小さいほど氷の融点は高い)を発見した。特に、やや細めのナノチューブを使用すると、氷の融点は27℃となり、大気圧・室温状況下の氷、すなわち『室温アイスナノチューブ』が形成されることを、世界で初めて発見した。

今後の展望 様々なナノスケール現象の解明にも役立てたい

 「研究の過程で、チューブ内を減圧し45℃まで温度を上げると、中の水が一気に気化して噴き出したのですが、こうした現象はナノサイズインクジェットなどに応用可能です。また、チューブ内の水と周囲の気体が入れ替わることも確認しました。しかも、面白いことに気体の種類によって入れ替わりが起こるもの、起こらないものがあるのです。この性質は、将来的には気体を選別するような機器・場面で広く使えるでしょう」
 現在の目標は、カーボンナノチューブによる新機能を持つ膜を開発することである。
 「面白いことに人間の細胞膜やタンパク質の分子なども、ちょうど1ナノ位のスケール。自然界や生体内では重要な現象がナノスケールで行われていることが多いのです。つまり、ナノ空間の物理現象(ナノサイエンス)が解明されると、そうした他の現象についてもわかってくる。そのためにも、ナノチューブを『膜』にして実験してみたい。実現すれば、ナノ空間で生じる物理現象の解明が飛躍的に進むのではないかと期待しているところです」

水を吸着しているカーボンナノチューブでつながれた2つの容器。容器1のガスの圧力がPc以下になると、ガス分子は容器2に移動できる 水を吸着しているカーボンナノチューブでつながれた2つの容器。容器1のガスの圧力がPc以下になると、ガス分子は容器2に移動できる
単層カーボンナノチューブ(左)と、その内部に形成された水の結晶(アイスナノチューブ・右)の構造模式図 単層カーボンナノチューブ(左)と、その内部に形成された水の結晶(アイスナノチューブ・右)の構造模式図
ガスと水(青い分子)の交換の様子を示す計算機シミュレーション。(a)はメタン、(b)はネオンの場合。300ピコ秒の後、(a)では水とメタン分子の交換が起こる ガスと水(青い分子)の交換の様子を示す計算機シミュレーション。(a)はメタン、(b)はネオンの場合。300ピコ秒の後、(a)では水とメタン分子の交換が起こる
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例

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