システムデザイン研究科

情報科学域

池井 寧

最終更新日:2019/02/28

超臨場感を創成するバーチャルリアリティ技術

バーチャルリアリティ、超臨場感、先端ヒューマンインタフェース、五感情報学

  • 池井 寧

  • Yasushi Ikei

研究概要 五感情報による“身体的追体験メディア”の創造
「五感シアター」を開発中体験の記憶を作り出す夢のマシン

 「五感情報学」と呼べる領域を開拓しようとしている。「バーチャルリアリティ」(人工現実感技術)と「ヒューマンインタフェース」(機器・情報を人にあわせて開発する技術)の分野に属する。
 1989年にバーチャルリアリティという用語が登場して25年、3Dテレビが現在実用化されているように、ディスプレイと専用グラス、サラウンド音響システムを使って3 次元的な立体空間を視聴覚的に体験できようになった。我々はさらに、触覚、嗅覚、さらには前庭感覚(運動感覚や平衡感覚)なども合わせて“体感” できる仕組みを研究している。目指すのは、別の誰かが体験した同じことを、臨場感をもって疑似体験できる“追体験メディア” の提供だ。そして、その再現性をよりリアルなものに高めること、すなわち“超臨場感”の追求を究極的な課題としている。
 追体験の意味は、一般に“他人の体験を自分の体験としてとらえること” である。たとえば従来、人は文章などを読むことで、知識として他人の体験を理解し、自らの体験のように感じていた。だが将来は、他人が経験したことを、まるでその人の体に自分が乗り移ったかのように、自らの五感で体験できるようになり、追体験の意味に新しい項目が加わるだろう。
 現在、体験の記憶を作り出す夢のマシンの開発を行っている。具体的には、まず3D映像で投影されたモノを指先の感覚でなぞることができ、重さも感じられる「触覚ディスプレィシステム」を開発した。現在は「五感シアター」(写真)を開発中だ。視聴覚、触覚に加え、嗅覚や前庭感覚も取り込んでいる。風や香りを放出する装置、微細な動きで足の裏に歩行感を生むステップ装置や体に揺れを生じさせるシート装置などを開発、搭載している。現在のコンテンツは海外旅行や陸上競技など。旅行者や選手が感じた世界を、五感をもって追体験できる。
 だが、五感シアターは現実と全く同じ動きを再現する装置ではない。ポイントは適切な情報を脳に投射することにある。3DTV が目や耳を通して情報を伝達するのと同様に、人間の身体をディスプレイのように使うことで脳に体感情報を入力する手法だ。旅行を追体験する際も実際に歩く必要はなく、ほんの数ミリほど体を動かしてやるだけ。このような五感を使った情報伝達方法を研究している。

最近のトピックス

今後の展望 米国で活躍する日本人スペシャリストの実態解明へ

 体感的な暗黙知の継承の難しさは職人技の世界でよく見られる。また人の知能の発達に身体性が重要であることは、最近の研究で明らかだ。世界中のさまざまな人の経験を、娯楽や学習としてだけでなく、もっと潜在的感覚としてとりこめるようになれば、追体験メディアの活用可能性はさらに広がるだろう。そのためには脳計測による認知状況の解析などが必要になる。

五感シアター
映像、音、臭い、風、振動などのシステムが連動して五感を刺激、海外の街を現実に旅行している感覚を再現できる 五感シアター 映像、音、臭い、風、振動などのシステムが連動して五感を刺激、海外の街を現実に旅行している感覚を再現できる
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例 将来は五感シアターをホームシアターとして普及できればと思っている。
旅行会社、ゲーム会社、スポーツ業界等での活用が考えられる。

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