都市環境科学研究科

環境応用化学域

朝山 章一郎

最終更新日:2019/03/11

QOLを向上させるバイオマテリアルの開発:ドラッグデリバリーシステム(DDS)の構築

バイオマテリアル(生体機能材料)、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、医用高分子、遺伝子、生理活性Zn2+、バイオ医薬品、生体適合性

  • 朝山 章一郎

  • S. Asayama

研究概要

超高齢・成熟社会を迎え、人類は高い生活の質(Quality of life:QOL)を求めている。当研究室では、人類の健康を維持しQOLを向上させるバイオマテリアル(生体機能材料)を創製し、主に、先端かつ均質医療を実現するドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System:DDS)の確立を行っている。水溶性(液相系)のバイオマテリアルであるDDS材料として、バイオ医薬品をはじめとする広義の医薬(核酸、タンパク質、生理活性亜鉛イオン)を、未だ治療法の無い疾患に適応させ、治療を実現する新規キャリアを合成している。 また、キャリアである高分子自体に根治治療効果や、体内で長期間安定に機能するための固相表面修飾能を持たせるなど、新奇なバイオマテリアルも開発している。
代表的なユニークで優位な技術としては、「プラスミドDNA(pDNA)と一つの陽イオンを有する生体適合性高分子(PEG)との結合体」による広義の核酸医薬である遺伝子(pDNA)のDDSの開発であり、pDNAを高密度に凝縮させ微小化することが可能である。pDNAとキャリアとの結合力の基本は静電的相互作用であり、当該分野では、多数のマイナス電荷(陰イオン)を有するpDNAと多数のプラス電荷(陽イオン)を有するキャリアとの結合体であるポリイオンコンプレックス(PIC)が核酸医薬のDDSに用いられている。当研究室では、静電的相互作用の制御に着目した研究を進め、一つの陽イオンを有するキャリア(PEG)とpDNAと結合体であるモノイオンコンプレックス(MIC)を開発した。MICは、PICと比べて、多点での静電的相互作用が無いため、pDNAを高密度に凝縮して微小化することができるので、生体個体内の目的の場所へ上手く辿り着けると考えられる。実際、マウスを用いた骨格筋への投与実験において、市販のPIC型のpDNA導入試薬( in vivo-jetPEI ) を上回る遺伝子発現効率を示した。この考え方は、米国化学会(ACS) の専門学術誌(Biomacromolecules)にも受理されており、基本特許(特許第6358661号)は成立した。

今後の展望 抗酸化剤やエピジェネティクスの分野にも展開

【応用例】
MICの技術は、pDNAを微小化させるので、生体個体内の今まで到達することが困難な領域へpDNAを送り込めると考えられ、乏血管性難治がん治療や遺伝性疾患治療への応用が期待される。また、バイオ医薬品デリバリーのためのタンパク質の非共有結合PEG修飾(PEGylation)へも応用が期待される(ACSOmega)。さらに、MICから派生し、インスリンの非共有結合PEGylationのための末端に非イオン性疎水基(コレステロール)を有するPEG (Bioconjugate Chem.)は、ポリプロピレン表面に高密度に吸着するので、高密度PEG固相表面修飾を可能とし、バイオイナート表面の構築が期待される(特開2018-123315)。
【今後の展望】
各種治療用ツールをpDNAから発現させることにより、難治性疾患治療への展開が期待できるので製薬会社との連携を希望する。また、高密度PEG表面修飾は、固相系のバイオマテリアルとして、医療機器メーカーとの連携を希望する。

産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例 核酸医薬(pDNA等)DDSの開発、バイオ医薬品デリバリー(タンパク質のPEGylation)、バイオイナート表面の構築(高密度PEG表面修飾)

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