理学研究科

岡本 龍史

最終更新日:2019/02/27

高等植物の受精および初期胚発生機構の解析

被子植物、卵細胞、精細胞、受精、胚発生、イネ、トウモロコシ

  • 岡本 龍史

  • Takasi Okamoto

研究概要 「in vitro受精法」を使い遺伝子の発現と機能を研究

 主要研究テーマは、被子植物のような高等植物の受精卵の初期胚発生機構を二つの観点から解析することだ。
 被子植物とは花を咲かせる植物だ。雄シベから飛ばされた花粉は雌シベの先につくと花粉管を雌シベの中の胚嚢へ伸ばして2 個の精細胞を送る。精細胞は卵細胞および中心細胞(一次胚乳細胞)と融合する。これを重複受精と呼ぶ。結果、卵細胞(受精卵)は胚に、中心細胞は胚乳となり、一個の種子を形成する。多くの生物はベン毛を持った精子が泳いで卵子へたどり着き受精するが、被子植物は水から独立して受精でき、非常に短期間で種子を作る。これらの点は被子植物が地球上で広く繁栄してこられた原動力になったと言われている。
 私の研究の第一の観点は、この重複受精がなぜ起きるのかということの解明だ。第二の観点は、卵細胞(受精卵)で最初に起きる不等分裂(第一細胞分裂)で細胞が頂端側と基部側の二つに分かれた際、各細胞はすでに異なる発生運命を背負っているが、この運命決定がどうなされるのか、ということにある。
 しかし、重複受精も第一細胞分裂も雌シベの内部で行われ、外からは観察できない。そこで用いているのが、イネを使った「in vitro受精法」である。たとえば、まずイネの雌シベと花粉から卵細胞と精細胞を取り出し、試験管内のマニトール溶液の中で電気的に細胞を融合させ、受精の瞬間から観察する、という手法である。
 細胞分裂が進行していく過程では、各細胞を切り出し、そこでどんな遺伝子が発現しているかを調べる。各細胞が頂端側か基部側かをベースに解析することで第一細胞分裂のメカニズムの解明に挑戦している。たとえば、イネの場合、約3 万種の遺伝子があるが、頂端側と基部側で分裂した各細胞の中で特長的に強く発現する遺伝子を比較し、それらがもたらす機能を探り出している。
 細胞の融合は通常、受精以外には起きない。逆に言えば、このときに細胞融合を積極化させるプログラムがあるわけだ。細胞融合に関係する遺伝子やタンパク質が見つかれば、受精メカニズムの解析は大きく進むことになる。

最近のトピックス

今後の展望 交雑受精卵の技術でハイブリッド植物の可能性

 受精にかかわる細胞や遺伝子の内容、メカニズムを解析でき、細胞を切り離したり融合させたりする技術を確立することができれば、最終的には同種、異種間の交雑受精卵を培養し、植物体へと育成させることができる可能性がある。産学官連携の可能性もここにある。なぜならそれは、品種改良やハイブリッド植物を作るための技術であり、食料問題や環境問題に貢献できる可能性があるからだ。しかし、交雑受精卵は成長の過程で種間の遺伝子の衝突が起こる。今後の研究としては、それをコントロールするために、どの遺伝子とどの遺伝子を選択すれば調和するかを分析する、といった課題がある。

異種配偶子融合による新イネ科植物の作出例 異種配偶子融合による新イネ科植物の作出例
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例 将来的には、交雑受精卵の培養による品種改良やハイブリッド植物の形成等

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