システムデザイン研究科

機械システム工学域

小原 弘道

最終更新日:2019/02/28

体外臓器灌流保存技術と臓器機能診断・再生システムの開発

肝臓、腎臓、膵臓、臓器移植、細胞移植、マイクロ流体、細胞、医用工学

  • 小原 弘道

  • Hiromichi Obara

研究概要 日本では大きく遅れているドナー臓器をとどける仕組み

研究者としての背景は機械工学、中でも「流体工学」にある。特に、固体、気体、液体の混ざった流れである「混相流」が専門である。混相流はプラント、発電所、浄化施設、食品工場などあらゆる産業に関係するだけでなく、人間の体内の流れも混相流である。実は米国の商務省の研究所(NIST)で流体機械の設計に関する研究活動をしているとき、同じメリーランド州内にあるジョンズ・ホプスキン大学やNIH(米国国立衛生研究所)の研究者と出会い、バイオメディカルと流体の密接な関係を知り、興味を持った。当時はDNAの持つ仕組みを機械設計につなげるための研究をされていたRam先生のもとでお世話になっていたが,漠然としたDNAの知識のみでDNAの複製やタンパク質合成など詳細なメカニズムは知らず、生命の研究者から聞くその仕組みにおどろくばかりであった。帰国後、医療と流れの視点からさまざまな研究に取り組み、例えば感染症予防のために唾液の飛翔の研究をはじめ流れの仕組みを暮らしに、医療に役立てるための研究に取り組んできた。

自動車工学やロボット工学があるように、臓器に注目し、「臓器工学」を掲げ、医工連携での研究を進めている。臓器は生き物を支える必要不可欠な存在であり、臨床経験的な膨大な知恵は蓄積されてきており、さまざまな治療がなされている。しかしながら、工学的な視点からの研究は十分なされておらず、不明な点も多い。われわれは腎臓や膵臓、肝臓などさまざまな臓器に支えられて生きているが、これらは、細胞・組織だけではなく血管とその流れとの密接な関係によってはじめて機能するものであり、臓器の中の流れに着目した臓器工学からの視点が新しい医療技術の確立のために重要となる。また臓器の仕組みや機能は、生命誕生以来の英知を集めた地球上のシステムの最高傑作の一つでもあり、臓器から得られた知恵をわれわれの身の回りの産業技術にフィードバックすることも可能である。肝臓の仕組みを応用した超高効率なエネルギー産生・蓄積システムによりエネルギーの問題を解決し、腎臓の仕組みを応用した純水製造技術により水の問題を解決するなど臓器工学の視点からわれわれの日常生活に役立てるための研究に取り組みはじめている。

未来の技術のためだけでなく今日明日の医療への工学からの貢献も重要である。研究室では、いのちの贈り物である臓器をきちんと、確実に待機患者の方に届けるために旭川医大、国立成育医療研究センターとの医工連携研究によって臓器灌流保存法の研究をすすめてきた。現状ではクーラーボックス内に、氷とともに臓器を保存液に浸漬して搬送する方法が一般的である。しかしながら、このような方法では移植につなぐことのできない臓器も多くなる。心臓停止後に血流の遮断によって劣化のはじまる臓器内に、管理された灌流液を供給することで臓器の機能を保存し、さらには機能判定、機能回復を期待する臓器灌流技術があり、研究室ではこの技術によって、腎臓、肝臓の移植を確実に広げていくための研究をすすめている。

また、臓器移植とならんで期待の高い細胞移植に関しても、臓器工学の視点から研究をすすめている。新生児のための肝細胞移植を確実にすすめるためには細胞の管理技術、移植技術の高度化が必要不可欠である。移植用細胞をいかに優しくそして確実に取り扱うための技術についても研究をすすめている。

最近のトピックス

今後の展望 新しい医療機器を世界に、そして臓器の持つ巧みな仕組みを工学の世界に展開

臓器の持つ巧みな仕組みをわれわれの暮らし、社会に役立てて行くために取り組んでいる。今すぐにでも患者さんに届ける必要のある技術から、病気の臓器を体外で再生する技術、新しく臓器を創る技術、臓器を守るために血管内から手術する技術など未来の技術まで、さまざまな技術を医療現場へ橋渡しをするために研究をすすめている。さらには、臓器の持つ巧みな仕組みを活用し、超高効率なエネルギー産生・蓄積システム、世界の水問題の解決のための超高効率純水製造技術などの研究による次世代の社会への貢献もわれわれの使命である。これらを実現する秘密は、ミクロレベルとマクロレベルの研究の積み重ねが出会うところにあると考えている。

肝蔵内の流動解析の一例
(ブタ肝蔵の門脈、肝静脈) 肝蔵内の流動解析の一例 (ブタ肝蔵の門脈、肝静脈)
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例 臓器移植、細胞・臓器培養技術、臨床医療機器開発等

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