システムデザイン研究科

電子情報システム工学域

多氣 昌生

最終更新日:2019/02/28

感温液晶カプセルを用いた温度の立体的な可視化技術

感温液晶カプセル、三次元、可視化

  • 多氣 昌生

  • Masao Taki

  • 鈴木 敬久

  • Yukihisa Suzuki

研究概要 目に見えない電磁波の人体や物質に与える影響を研究

電磁波が人間生活をとても便利にしてきたことは知られている。MRIスキャンなどの高機能医療機器は、みな電磁波研究の産物だといってもいい。
 その一方で電磁波が、人体や物質に強度によっては悪影響を与えうることも、たびたび話題に上るようになっている。たとえば携帯電話が心臓ペースメーカーの誤作動を誘発する可能性も、その一例だ。
 多氣昌生教授は、電磁波の長所も短所も永年にわたって研究してきた。特に電磁波が人体に与える影響についての権威だ。
 「電磁波の世界は肉眼ではとらえられませんので、専門に研究している人を除いたら、なかなか説明が難しかったのです」
 そこで電磁波の研究はもちろん、電磁波の分布や対流の状況を目で見えるようにできないか、つまり可視化にも取り組んでいる。

最近のトピックス 液晶の特性を利用した電磁波の可視化技術

「体温計などにも応用されているように、液晶が温度によって色を変えることはわかっていました。これを電磁波の可視化に利用できないかなと思いました」
 多氣教授は『電磁波が何かに当たると発熱する』という性質と、液晶の特性についての関連について、そう説明する。そのために感温液晶が封入された10~30μmの非常に小さなカプセルを利用することを考案。そのカプセルをゲルや液体に均一に混ぜることで、電磁波の影響による温度分布を擬似的に再現することを試みた。
 たとえば人体を想定した液晶カプセル混入のゲル状物質または液体を、当研究室では『ファントム』と呼んでいる。金沢医科大学との共同研究では、眼球にレーザー波やミリ波をあてたところ、房水が温度変化を起こすだけでなく、対流も発生することが液晶カプセルを用いた測定によって確認している。

今後の展望 医療分野から宇宙開発まで広範囲にわたっての期待感

こうした液晶カプセルの応用範囲は、少し考えただけでも、多分野にわたっていることがわかる。
 より調理効率の高い電子レンジのテスト、携帯電話の電磁波によるエネルギーの分布の把握、ガンの温熱治療など高度医療器具の開発……、それを目で見えるデータとして残すために、微細な感温液晶カプセルは役立ってくれる。しかも、人体や試験動物などを介さずに、安心で安全な試験が進められるだろう。
 「宇宙空間で人工衛星や探査ロケットにふり注ぐ、宇宙線による物質の変化についても応用ができないかな、と今は考えています」
 実際に人工衛星に使われる絶縁体に感温液晶カプセルを混ぜ、高エネルギーをあてることで、劣化の観察をしようとする試みが、すでに当研究室で始まっている。
 その他、原則として非接触、非破壊が望ましい物についてのエネルギー分布をはかる新しい手段として、当研究室の『感温液晶カプセル』は、大いなる可能性をすでに予感させる成果を挙げているのである。

ダイポールアンテナからの高周波電磁界によるファントムの内のエネルギー吸収分布の可視化 ダイポールアンテナからの高周波電磁界によるファントムの内のエネルギー吸収分布の可視化
ゲルファントムを電子レンジで加熱した時の
加熱分布の可視化。加熱機器の加熱特性を評
価することが可能である ゲルファントムを電子レンジで加熱した時の 加熱分布の可視化。加熱機器の加熱特性を評 価することが可能である
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例

印刷用はこちら