人間健康科学研究科

放射線科学域

井上 一雅

最終更新日:2019/02/28

マルチモダリティイメージングを用いたがん研究

Molecular Imaging(分子イメージング); Preclincal Imaging(前臨床用イメージング); SPECT/CT(単一光子放射断層撮影とコンピュータ断層撮影が一体となった 核医学検査); PET/CT(陽電子放出断層撮影とコンピュータ断層撮影が一体となった核医学検査); Near-Infrared Fluorescence(近赤外蛍光), MR(I 磁気共鳴画像)

  • 井上 一雅

  • Kazumasa Inoue

研究概要 がんの診断や治療評価の精度向上が可能に

 生体研究や医療の現場では、分子や細胞レベルでの生体内の状況を可視化するため、放射線、光、磁気、超音波などのさまざまなモダリティを活用した生体内イメージング技術が用いられる。2000年頃、個々に発展してきたモダリティを複数あわせて使用するための技術、装置、プローブなどの研究開発が盛んに行われるようになった。これを「マルチモダリティイメージング」分野と呼ぶ。
 特に医療分野では病変部位の探知、性状診断の精度向上に資することができるため、世界各国で臨床実用化へ向けた研究開発競争が始まっている。代表的例としては、2000年頃に登場したPET/CT装置がある。すでに市販化され、今や臨床現場や前臨床研究において必要不可欠となっている。放射性同位元素を使う核医学分野の研究者を起点として、臨床現場での経験を生かしながら、この新しいフィールドに挑戦している。
 マルチモダリティイメージングの基本的課題の1つは、個々の技術でイメージングされた画像を正確に重ね合わせることで、個々に得られたさまがんの診断や治療評価の精度向上が可能にざまな情報を統合して相乗的にこれらを活用できるようにすることだ。たとえば、CTやMRIは体内の骨や充実性臓器の形態を捉えることが得意だが、放射性同位元素を用いた核医学的手法では脳内の血流状態や腎臓機能などの機能評価が得意である。双方から得られる「形態情報」と「機能情報」をあわせることで診断や治療評価の精度を向上することができる。
 現在、がんの診断や治療評価の精度を向上させるために必要不可欠なマルチモダリティメージングの研究開発に取り組んでいる。具体的には、核医学イメージング(SPECT、PET)に、組織コントラスト分解能に優れるMRIや、迅速かつ多様性の高い近赤外光イメージングなどの技術を複合させる技術および複合イメージングのための多機能な分子プローブの開発を国立がん研究センター東病
院と共同で実施している。
 小動物イメージングでの高精度SPECT-MRI複合技術およびSPECT- 光トモグラフィ複合技術も開発中だ。放射性標識化合物の組織内局在を高分解能に可視化可能な技術であるオートラジオグラフィと、顕微鏡下で得られる近赤外蛍光画像や組織染色画像とを高精度に複合させるため、全モダリティに共通な基点マーカーを開発している。

最近のトピックス

今後の展望 「多機能分子プローブ」を開発予定

 がん治療において、センチネルリンパ節の同定は患者の予後に大きくかかわるため重要なテーマである。手術前および手術中に別々の検査として施行される「放射性同位元素」および「色素」を用いたセンチネルリンパ節の同定検査に着目し、これら2つの検査を統合させるため、放射線を出すような薬剤と蛍光を出すような薬剤を合わせたような「多機能分子プローブ」を開発していく予定。この多機能分子プローブを前臨床研究において評価するため必要不可欠な、「SPECT-光トモグラフィ複合技術」の開発も同時に行う予定。

In vivo(生体)マルチモダリティイメージングの一例
さまざまなモダリティから得られる画像情報を統合して活用できるようになる。 In vivo(生体)マルチモダリティイメージングの一例 さまざまなモダリティから得られる画像情報を統合して活用できるようになる。
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例 核医学イメージング、分子イメージング、複合分子イメージング

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