システムデザイン研究科

電子情報システム工学域

三浦 大介

最終更新日:2019/02/28

磁気分離による環境浄化

超伝導応用工学、超伝導材料、磁気分離、環境浄化、資源回収

  • 三浦 大介

  • Osuke Miura

研究概要 ゼロエミッションでかつ高速大量処理も可能

 学部生だった1987年、臨界温度が液体窒素温度のマイナス196度を超えた酸化物超伝導体が発見され、超伝導分野に大きな注目が集まった。私も従来から興味のあった環境とエネルギー分野における新技術として将来性のある超伝導に取り組むことを決めた。
 超伝導体とは、低温状態で電気抵抗がゼロになる物質のことである。現在超伝導ケーブル、超伝導変圧器、超伝導限流器、超伝導電力貯蔵装置といった超伝導電力システムという枠組みの中で活用が進められている。無損失で大量の電流を流すことが可能で、広い空間に高磁場を発生させる超伝導電磁石を作れる。JR東海の超電導リニア鉄道や病院のMRI(磁気共鳴画像)装置はその応用例。
 在籍している超伝導応用工学研究室(水口佳一助教と運営)のテーマは、超伝導材料等の開発と超伝導応用研究であり、その一環としてリンで汚染された排水を浄化すると同時にリンを回収する技術を開発している。リンは排水から川や海に流出し、富栄養化等の一因になる一方、資源としての枯渇が問題になっているからだ。
 この技術の仕組みは、砂鉄が磁石にくっつくのと同じ原理を用いている。磁性体である砂鉄は磁石の周りに発生する磁場の勾配に引き寄せられてくっつくのである。
 まずリンを効率的に吸着する磁性吸着剤(たとえばジルコニウムフェライト粒子)と汚染水を混ぜて磁性吸着剤でリンを捉える。次に、混合液を超伝導磁石によって大きな磁場勾配が発生する磁性線フィルターを通過させ、リンを捉えた磁性吸着剤を磁気力でトラップさせる。フィルターが一杯になったら磁性フィルターの磁場をなくす。フィルターから分離した磁性吸着剤をアルカリ性溶液に移すと磁性吸着剤とリンが分離するので、それぞれを回収し、リサイクルができる。まさにゼロエミッション技術だ。非常に強力な超伝導磁石を用いることで、磁性吸着剤が混合した汚染水の流速が早くとも磁性吸着剤を磁性フィルターにトラップできるため、大量処理も可能だ。
 この技術は実用化に近いものあり、地域の下水道局や企業と連携している。また中小企業の依頼で工場排水からリンを分離・回収する方法に関して相談を受けている。

最近のトピックス

今後の展望 難分解性有機物や水銀・ヒ素を回収する研究

 除去対象物質や有価物質を効果的に吸着する磁性吸着剤の開発は大きなテーマである。リンの回収のほかに難分解性有機物や水銀・ヒ素を回収する研究をしている。これは途上国の飲用水の汚染問題を解決するためのものだ。またより高性能で安価な超伝導磁石を開発するために室温超伝導体というさらに高温の超伝導体を発見、実用化する夢もある。現在、超伝導材料の原料に使われているレアアースは希少、高価であり、もっと利用しやすい素材の開発や新たな超伝導物質を探索する研究を始めている。大学の強みは萌芽的研究である。芽が出たなら費用対効果調査をして企業の参加を得て、さらに研究を進める。もちろん、中小企業からの相談にも対応している。

磁気分離装置の仕組みの例 磁気分離装置の仕組みの例
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例 磁気分離による上水・下水処理、工場排水処理、環境浄化、有価資源回収、リン除去装置、リン回収装置等

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