大学等の間での研究ライセンスの取扱いについて
大学等(注1)において、学術研究遂行のための他大学との研究ライセンス(注2)の供与行為は、学術研究の進捗度の向上及び研究成果の充実に大きな意味を持つ、教員の方々の自主的な活動です。第三者の特許権を大学等で実施する行為が特許法上の「試験・研究」の適用を受けれるか否かについては見解の分かれるところで日本では未だありません(アメリカでは特許権侵害行為となるとの判例があります)。
一方で、学術研究の面から、大学等における知的財産権の取扱いには、「他大学等が所有する特許権を円滑に利用できないと、大学での自由な研究が阻害されるのでないか」、「大学の研究者の特許権の取扱い方によっては、研究者の流動性向上の障害となるのではないか」などの懸念がもたれがちです。
これらの懸念に対応するために、総合科学技術会議は平成18 年5月23日に、大学等の学術研究における、大学等の間での知的財産権の使用の円滑化を図ることを目的として、「大学等における政府資金を原資とする研究開発から生じた知的財産権についての研究ライセンスに関する指針」を公表しました。
「大学等における政府資金を原資とする研究開発から生じた知的財産権についての研究ライセンスに関する指針」の基本的な考え方
- 大学等の間では、非営利目的の研究にあたり、各々が所有する知的財産権の使用を認める
- 研究ライセンスの対価は、原則ロイヤリティ・フリー又は合理的なロイヤリティとする
- 簡便で迅速な手続による研究ライセンスの供与に努める
(注1)大学等とは、大学、大学共同利用機関、高等専門学校、研究開発を行う国の施設等機関、公立試験研究機関、研究開発を行う特殊法人及び独立行政法人をいいます。
(注2)研究ライセンスとは、非営利目的の研究のための、大学等が単独で所有する知的財産権の非排他的な実施許諾をいいます。
研究ライセンスの利用例
(大学等における政府資金を原資とする研究開発から生じた知的財産権についての研究ライセンスに関する指針(概要版、総合科学技術会議)」より一部改変
東京都公立大学法人の基本姿勢
産学公連携センターは、法人が承継した知的財産の管理と、それらの産業利用を図る場合の交渉・契約業務等を担当しています。 大学等との研究ライセンスの供与については、当該指針の基本方針を踏まえて、下記の事項を確認し、学術研究における活用を優先して柔軟に対応していきます。
- 「東京都公立大学法人知的財産取扱規則第 2 条 10 号」で定義される特許権、実用新案権、意匠権、育成者権、回路配置利用権、プログラム、データベース及び法人著作に係わる著作権、及びノウハウを本法人の研究ライセンスの対象とします。
- 学術研究を目的として大学等との間で研究ライセンスを無償で授受する場合は、原則として産学公連携センターは関与しません。ただし研究ライセンスの供与を受けた場合には、研究者の方に研究ライセンスの範囲や条件等を遵守していただくようお願いします。 また、研究者間で契約書を締結することを推奨します。
- 学術研究を目的とはしているが、大学等との間で研究ライセンスを有償で授受する場合、あるいは産業目的として第三者に供与する場合は、産学公連携センターが交渉・契約を担当します。
- 法人の研究者が他の大学等へ異動した場合、その異動先において円滑に学術研究が継続できるように、当該研究者の求めに応じて、原則無償でその研究者の発明に係わる研究ライセンスを供与します。 また必要な場合、他大学等の知的財産部門との交渉・調整を担当します。
- 大学等の間における研究成果有体物
(注3)の提供は、上記の研究ライセンスへの対応に準じて実施します。