人文科学研究科

文化基礎論専攻

山田 昌久

実験考古学

実験考古学、植物資源、器具効力測定、人類−森林関係

研究概要 住居作りや器具の再現・使用など、実験を通して、その効果や効力を数値化

 これまで考古学は、遺跡の施設や出土した器具を観察して、技術や文化の違いなどを整理することに留まり、観察による類型研究の域を出なかった。しかし最近は、理工系の様々な分野の技術を導入して科学的に研究する方向へ進んでいる。首都大学東京の考古学研究室は、特にその傾向がある。
 「遺跡が残される大地の研究や環境研究は、地理学や生命科学などが基盤になっていて、土や環境がどうなっているかということをよく理解して、人は歴史を作ってきました。特に私は、植物と人の関わり方を探りながら、人間社会の起源や将来について研究を進めています」人類の起源研究は、多くの人々の興味をかき立てるが、従来の観察による考古学は、決して分かりやすいものではなかった。そこで山田研究室は、日本の他大学では行っていない“実験考古学” を展開している。
 「例えば、石斧がどのくらいの時間で木を切れるのか、その木材を使って家を建てるとどのくらい手間がかかるのかなど、器具の効力や施設の具体的な効果を明らかにし数値情報にしています。樹木の伐採や住居作り、丸木舟作りなどを行ったり、土器や住居暖房などが燃料材をどのくらい必要とするか、必要量の調査や温度上昇効果の測定、住居の構造強度に関する計算を行ったりしています」

最近のトピックス 実験考古学による新しい研究成果に多方面の人々が注目・評価

 「実験により、自然との関わりや当時の暮らしぶり、木を生産経済にしていく過程など人々がどのように生きてきたか、その様々な在り方がわかってきて、いろいろな議論ができるようになりました」
 人類の技術発達史や環境交渉史に次々と新しい研究成果が上がっているという。縄文時代から始った里山づくりの研究は、現代の課題にも通じる、人間の自然知研究でもあるとのことだ。このような成果は各方面も注目しており、NHK教育テレビ「知るを楽しむーなんでも好奇心」で、原始住居の構造や仕様材、耐久性、暖房効果、消費燃料材量などの実験結果が紹介された。同じくNHKのETV特集では、鳥取県で発見された弥生時代の木工房を取り上げ、どうしてそこに木工房を作ったのか、それはどんな意味があるのか、実験考古学を通して紹介された。
 また、地方自治体からも多くの講演依頼を受けている。さらには、国指定史跡の専門指導や各地にある博物館の展示指導、教育委員会に招聘されての講演など、幅広く社会貢献を行っている。

今後の展望 独自の研究成果を提供する「実験考古学センター」開設を目指して

 「ヨーロッパやアメリカには、『実験考古学センター』がありますが、日本にはまだありません。ぜひとも.首都大学東京に『実験考古学センター』を開設したいと考えています」
 実験考古学は、様々な分野に課題を発見することで、また多くのコトを解き明かし新しい議論へと発展していく。
 「この大学には、生命科学、生態学、人文・地理等を研究する様々な専門分野があります。学際的な協力関係のもと、人間の文化や自然との関係についてフィードバックしながら研究していく1分野として実験考古学を発展させ、日本の中でも独自の研究室として、次世代へ繋げる提案を発信していきたいと思います」

1 日何キロの薪で3 食煮炊きできるのか、薪の使用量と温度上昇効果を測定。 1 日何キロの薪で3 食煮炊きできるのか、薪の使用量と温度上昇効果を測定。
当時の道具を再現し実際に用いて、樹木の伐採から丸木舟の製作、乗船までを実験により検証。 当時の道具を再現し実際に用いて、樹木の伐採から丸木舟の製作、乗船までを実験により検証。
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例

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