都市環境科学研究科

都市システム科学域

山本 薫子

都市インナーエリアの社会的変容・再編に関する研究

都市社会学、地域社会学、コミュニティ論、社会調査

  • 山本 薫子

  • Kahoruko Yamamoto

研究概要 横浜・寿町で18年にわたり現地調査を継続
変遷する簡易宿泊所の利用者今は生活保護者が8割に

 都市化に伴う社会関係や産業構造の変化などに関する調査・研究をテーマとしている。都市社会学はシカゴのインナーエリア(都心中心部に生まれる低所得者地域)への関心から出発した学問だが、「寄せ場」として知られる横浜•寿町において現地調査を長期継続する中で、日雇い労働者、外国人労働者、生活保護受給者などの動静と彼らに対する各種の支援者、支援団体、行政、事業者等の活動、地域構造の変化などに関して研究してきた。比較研究として2012年から、カナダのバンクーバー市にあるダウンタウン・イーストサイドというインナーエリアでの現地調査を始めている。
 インナーエリアの研究を始めたのは、大学院進学後の1996年、修士課程の研究からだ。寿町にある「カラバオの会」(寿・外国人出稼ぎ労働者と連帯する会)という外国人労働者支援団体でボランティアをしながら外国人労働者のインタビュー調査を独力で開始し、その成果を修士論文、博士論文にまとめた。当時、なぜかカラバオの会の活動は本来の支援対象である寿町地区在住の外国人労働者のニーズや意識にはそぐわないという不思議なギャップが生じていた。現地に入ったことで、貧困やマイノリティ、外国人などの問題に強い関心が生まれた。その後、本研究は『横浜・寿町と外国人』(福村出版)として2008 年に上梓した。
 現在も寿町での調査、研究を続けているが、寿町は日雇い労働者や外国人労働者の街から生活保護受給者の街へと一変した。住民の80%以上が生活保護受給者だが、男性で独り身の高齢者が多く、民間の介護・看護機関やヘルパーも地域に増えている。日雇い労働者向けだった125 軒、約9,000室ある地域の簡易宿泊所は生活保護受給者に優先的に部屋を貸している。今や寿町は福祉の街となった。
 高齢化社会が進展して行く中、社会的弱者の高齢化も進展する。日本社会全体が低成長の時代を迎えている中で彼らの生活をいかに保障、支援していくことが可能かなど、今後も研究を通じて考えていきたい。

最近のトピックス

今後の展望 地域社会で蓄積されてきた経験の再評価

 現在、公的支援の中で寿町を活性化させようとする動きがあるが、地域で活動してきた住民や支援者がこれまで経験してきたことも活かすべきではないかと感じている。注目したいのは、寿町は時代とともにさまざまな種類の住民や支援者が出入りしてきた街であり、行政施策の一方で市民運動や社会運動が継続的に行われ、大都市でありながら住民同士の顔が見える関係を築いているという点だ。その背景には地域の中で醸成され受け継がれてきた「文化のようなもの」が影響しているのではないかと推察している。今後はそこに光を当てて寿町の再評価を試みたい。

横浜市寿町の中心街。簡易宿泊所だけでなく、横浜市の福祉関連施設や民間の社会福祉法人、協会などが集積している。 横浜市寿町の中心街。簡易宿泊所だけでなく、横浜市の福祉関連施設や民間の社会福祉法人、協会などが集積している。
産業界や自治体の課題のうちで、適用可能な例 首都直下型大震災を想定した学際研究「総合防災対策研究プロジェクト」において、「まちづくりとガバナンス」という視点から広域長期避難で発生する避難弱者の抱える課題等について調査している。

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